Top > Others >> プロモーション・システムの利用
2003(平成15)年 6月 1日、「小型船舶操縦士免許制度」が大幅に改訂されました。(※詳細は Others >> 小型船舶操縦士制度 で解説しています。)
今回、この改訂で注目されている「プロモーション・システム」(Promotion System:昇進制度)を利用して一級小型船舶操縦士( 5トン限定)に挑戦しましたので、その概要をレポートします。
また、プロモーション試験を受験する場合に一番の難関である「航海計画」(海図問題)について、受験対策にも利用できるように少し詳しく説明しています。
2004年12月13日
※本ページのオリジナルは一級小型船舶操縦士( 5トン限定)に関して記述していましたが、平成16年(2004年)11月より 5トン限定区分が廃止されました。この規制緩和に伴い、オリジナル・ページにあった「5トン限定」の記述の一部を削除しましたので、ご了承ください。規制緩和に関する詳細は、マリンレジャーの活性化に向けた小型船舶制度の整備等について(国土交通省、平成16年10月22日)をご覧ください。
プロモーション・システム(Promotion System)というのは、日本語に訳すと「昇進制度」ということになります。小型船舶操縦士免許(旧海技免状)の場合、改訂前は上級の資格を取得しようとすると、上級資格の試験科目をほとんど受験(実技試験の一部に免除あり)する必要がありました。しかし 2003年 6月 1日の改訂によって、現行資格を受験するときに習得した知識や技能については免除され、上級資格に不足する差分の科目のみを受験することで、上級資格を取得することが可能となりました。
上級移行パターン | 免除される試験科目 |
---|---|
一級( 5トン限定) → 一級(限定なし) | 学科全部免除 |
二級( 5トン限定) → 二級(限定なし) | 学科全部免除 |
二級( 5トン限定) → 一級( 5トン限定) | 学科1部免除、実技全部免除 |
二級(限定なし) → 一級(限定なし) | 学科 1部免除、実技全部免除 |
二級( 5トン限定) → 一級(限定なし) | 学科 1部免除 |
特殊 → 一級又は二級(湖川小出力限定除く) | 学科 1部免除 |
特殊 → 湖川小出力 | 学科 1部免除 |
2004年12月13日
*この表は、平成16年(2004年)11月の 5トン限定区分の廃止以前のものです。
下級資格から上級資格へ移行するパターンは上の表のようなものが考えられます。例えば黄色の背景で示している、今回私が挑戦した「現行 二級(旧四級も該当)の免許取得者 → 一級への移行」の場合、実技試験の受験は必要なく、学科試験も一部が免除されます。学科科目の一部免除は、「一部免除」というより「一部受験」と言った方がふさわしいでしょうか、「上級運航 I」および「上級運航 II」の2科目のみの受験となります。
このように新しいプロモーション・システムを利用すると、ユーザにとっては最低限の負担で上級資格が取得可能になります。
2000(平成12)年に「四級小型船舶操縦士」を取得したときは、ボート免許が初めてであったので自宅近くのボートスクール に入校しました。今回は実技試験が免除されるということもあり、個人で受験することにしました。個人で受験する場合、情報不足が気がかりですが、財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会 JMRA(特定事業本部)でボート免許に関する全ての公式情報が提供されています。JMRAは運輸大臣の「小型船舶操縦士試験機関・更新講習指定機関」に指定されており、全国各地で定期的に小型船舶操縦士試験を実施しています。試験の日程や受験手続きについてはホームページで詳しく解説されていて、受験申請も JMRA に提出します。
受験手続きについては、JMRAのホームページ に詳しく説明されていますが、概要を示すと以下のようになります。
書類 | 数 | 備考 |
---|---|---|
小型船舶操縦士国家試験申請書 | 1 | A4サイズのOCR用紙です。用紙はJMRAの地方事務所で入手でき、送料を負担すれば郵送してくれます。 |
受験票・合格証明書 | 1 | 「小型船舶操縦士国家試験 受験票」と「操縦試験合格証明書」が左右に繋がったカードで、真ん中にミシン目が入っています。これもJMRAの地方事務所で入手できます。 |
写真(縦45mm、横35mm) | 2 | パスポート用写真の規格と同じです。受験票と合格証明書に貼付します。合格後の免許申請に 1枚必要ですので、計 3枚準備しておいた方が良いでしょう。 ※身体検査証明書を提出する場合は、貼付用に更にもう 1枚必要です。 |
「本籍記載の住民票の写し」のコピー | 1 | 「本籍記載の住民票の写し」(役場で入手します)のコピーが 1枚必要です。合格後の免許申請に「写し」が必要ですので、受験申請にはそのコピーを提出します。 |
身体検査証明書 | 1 | 学科試験の会場で身体検査が行われますので、会場で身体検査を受ける場合は必要ありません。事前(6ヶ月以内)に病院などで検査を受ける場合は、所定の「身体検査証明書」に記入・証明されたものを提出します。視力・弁色力・聴力などの簡単な検査ですので、料金や手間を考えると会場で受けた方が良さそうです。*1 |
操縦免許証・海技免状のコピー | 1 | 現有あるいは失効している免許証・海技免状のコピー。免許申請時に旧の操縦免許証等を返納しますので、受験申請にはコピーを提出します。 |
受験票の送料 | 1 | 受験票は簡易書留で郵送されてくるので、その送料として 440円が必要です。納入は現金か切手で行います。 |
2004年10月10日
*1:身体検査の中で「弁色力検査の基準及び検査方法」が2005年 1月から改正される予定です。 詳細は、小型船舶操縦士に係る身体検査基準の改正について(国土交通省、平成16年10月 5日)をご覧ください。
受験申請に前後して受験の準備を進めますが、独学で受験されるには、以下のような参考書および問題集が役に立ちます。
参考書名 | 発売元 |
---|---|
小型船舶操縦士 学科教本II (財)日本船舶職員養成協会 編著 | 舵社 |
一級小型船舶操縦士「上級科目」 問題集 (二級[旧四級]から一級への進級用) | 舵社 |
練習用海図 No 150 日埼至月埼 | 成山堂書店 |
練習用海図 No 200 長埼至角埼 | 成山堂書店 |
参考書と問題集は 株式会社 舵社の小型船舶受験用参考書です。教本の方は小型船舶教習機関で使用されているものと同じで、いずれも 舵社の出版物サイト から直接購入することが出来ます。
「練習用海図」(2種類)は実際の試験で使用する海図と同じもの(※タイトルが「試験用」となる以外は ...)ですが、問題集には海図が付属しないので、別途入手する必要があります。発行元の 株式会社 成山堂書店 に問い合わせてください。
「一級小型船舶操縦士 学科試験」には「海図」を用いた問題があり、海図に航路を記入したり、自船の位置を書き込んだりします。そのため、上記の参考書以外に、「三角定規」(30cmくらいの 2枚セット 1組)、コンパス、ディバイダー(いずれも脚長 110〜130mm程度)が必要です。0.1海里の精度(海図上の実寸法で 0.9mmほど)で解答しますので、出来るだけガタのない精度の高いものが好ましいでしょう。海図記入には細めの鉛筆の方が使いやすいので、0.3mm(BかHB)程度の、OCR記入用には太めの 0.7〜0.5mm(BかHB)程度のシャープペンシル、そして修正用にプラスチック消しゴムを準備しておきます。
受験科目は大きく分けて「上級 運航 I」と「上級 運航 II」の二つです。問題数は全部で14問あり、その内訳は以下のようになっています。
上級 運航 I : 8問 | ||
科目 | 内容 | 問題番号 |
---|---|---|
航海計画 | 全航程の距離と所要時間(海図使用) | 問51 |
船位の測定(海図使用) | 問52 | |
流潮航法(海図使用) | 問53 | |
航海計画に関する注意事項、航海中の注意事項、航海計器、救命設備、通信設備 | 問54 | |
気象・海象 | 気象予測、潮流、海流 | 問55 |
潮汐 | 問56 | |
荒天航法 | 荒天航法、台風避港 | 問57 |
海難防止 | 海難事例 | 問58 |
上級 運航 II : 6問 | ||
科目 | 内容 | 問題番号 |
---|---|---|
機関の保守整備 | 燃料消費量、航続距離、ディーゼル及びガソリン・エンジンの基本 | 問59 |
燃料油系統、潤滑油系統 | 問60 | |
冷却水系統 | 問61 | |
動力伝達系統 | 問62 | |
機関故障時の対処 | 始動不良、停止、オーバーヒート | 問63 |
異常な振動、臭気、音 | 問64 |
試験時間は 70分で、四肢拓一のOCRシートで実施されます。合格基準は、
a. 上級運航 Iが 4問以上、上級運航 IIが 3問以上正解であること( 50%以上)
b. 合計 10問以上正解であること( 65%以上)
となっています。
試験科目の表からも分かりますが、「四級小型船舶操縦士試験」には出てこなかった海図を使用した問題が 3題あります。また、一般には馴染みの薄い「ジーゼル・エンジン」を含む機関の問題が 8問もあります。私の場合、二級自動車整備士の資格を持つことから、「上級 運航 II」のエンジン関係については、問題を眺めていても何となく出来そうな気がしたのですが、マリン駆動系と海図を使用した「航海計画」についてはキチンと勉強する必要がありそうです。
次の項では、私なりに分析した「海図問題」のポイントをまとめています。
海図についての基本的な知識は二級(旧四級)でも学びますが、海図を本格的に使用した問題は初めてとなります。「一級小型船舶操縦士試験」では、上級運航 I の航海計画 4問中、3問が海図を使った演習問題であり、大変大きなウェイトを占めています。以下に「海図問題」のポイントを私なりにまとめましたので、受験の参考にして頂ければ幸いです。
なお、説明文中の図は少し縮小しているので見づらいと思います。図をクリックすると若干鮮明な図がポップアップ表示されます。
最初にどの問題にも共通する基礎的な知識を説明します。
1.経度、緯度から船位を求める
★ 経度、緯度について詳しく知りたい人は → こちら をクリック
海図の四辺には縦方向に「緯度」を示す「緯度目盛」、横方向に「経度」を示す「経度目盛」が印刷されています。海図問題に出てくる「出航点」や「到着点」は経度と緯度で指示されることが多く、経度と緯度の指示値から海図上の船位(ボートの位置)を特定します。
緯度は「北緯○○度 −○○.○分」(北半球の場合)と表現され、「30゜−05.2’N」のように記されます。
Point
試験用海図(縮尺 1/200,000)では、緯度線(横線)は 10’(分)毎に引かれており、緯度目盛は 1’毎に白黒目盛、更に 0.2’毎に最小目盛が印刷されています。
この緯度目盛は海図上で距離を測定するときに使うので、目盛と距離の関係を覚える必要があります。
Point
緯度目盛の 1’は 1海里(1マイル、1NM(nautical mile:航海用マイル) = 1852m)ですので、最小目盛 0.2’は 0.2海里です。また、1時間 1海里進む速力を 1ノット(1KN(knot) = 時速1852m )といいます。
経度も同様で、「東経○○○度 −○○.○分」と表現され、「134゜−46.0’E」のように記されます。海図上の経度線(縦線)は10’毎に引かれ、経度目盛も大まかに 1’毎に白黒目盛、0.2’毎に最小目盛が印刷されているのも緯度目盛と同様です。
なお、緯度目盛に併記されている「km表示」および経度目盛は距離の測定に用いることはありません。
「゜(度)」と「’(分)」の間の「−」(ハイフン)は区切り記号ですので、マイナス記号と勘違いしないようにしましょう。
三角定規は30cm程度が使いやすいと思います。試験用海図の大きさならば、このサイズの三角定規を 2枚組合わせれば寸法は何とか足ります。なお、三角定規に目盛等が記してあると海図の表示とオーバ・ラップして見づらくなります。できれば目盛などが印刷していない透明の三角定規を準備すると良いでしょう。
2. 船位から経度、緯度を求める
前項とは逆に海図上で船位が特定された場合に、経度と緯度を計測することが出来ます。次のように行います。
3. コンパスローズ(コンパス図)を使ってみる
★ 偏差、自差について詳しく知りたい人は → こちら をクリック
海図での方位(方向)はコンパスローズ(compassrose:羅針図、方位図)で示されます。「rose」は「薔薇」の語意と思われますが、なかなか洒落た命名ですね。
航海では磁気コンパス(compass:方位磁石)を使って針路を決めます。コンパスは地磁気に従って磁北(地磁気の北)を指すのですが、真北(「シンボク」と読みます、北極を指し地図の真北「マキタ」の方位)とは若干のズレがあり、このズレを「偏差」といいます。偏差は地域により異なり、また経年により変化するものです。
船の進む方向(針路)は通常「磁方位(磁針方位)」(磁北を起点とした方位、針路なので磁針路ともいう)で示されます。以下の問題でも殆ど「磁方位」で間に合いますが、「潮流」の「流向」(潮の流れる方向)のみ「真方位」(真北を起点とした方位)で示すことになっています。
コンパスローズには二つの同心円が描かれ、その内側が磁方位、外側が真方位を表しています。また、前述した偏差は磁方位の磁北線上に「 7゜20'W 1989(1'W)」などと記されています。これは「1989年(観測年)に偏差が西へ 7度20分あり、1年に1分ずつ西へ偏差が移動する」という意味になります。
では、実際にコンパスローズを使ってみましょう。海図問題には「磁針方位○○度」とか「磁方位○○度、距離○○海里」などと磁方位で針路や船位を特定する問題が出ます。この場合、コンパスローズ以外の場所で方位を知る必要がでてきますが、図のように三角定規を 2枚組み合わせて、任意の場所に方位線を引くことができます。
右図のように、方位線を引く方向により、スライドさせる三角定規やスライド方向は異なるので注意してください。また、この例のようにコンパスローズの近くに方位線を描く場合は単純ですが、遠い場所に方位線を描くときは、 2つの三角定規を交互にスライドさせ、ベースとなる三角定規を交替しながら移動していきます。
方位線を引くのとは反対に、コンパスローズを使えば、既に引かれた方位線の方位を計測することが出来ます。手順は「指定された方位線を描く方法」と逆になります。
以上がコンパスローズについての一通りの説明です。海図上での方位計測は全てコンパスローズに依存しますので、使い方を何度も練習しておきましょう。
4. 変針点とは
基礎的な知識の最後になりますが、航海の途中に針路を変える場合があります。針路を変えることを「変針」、針路を変える地点を「変針点」といいます。航海計画の問題には全航程の距離や所要時間を求めるものがあり、出航点から到着点に至るまで数回の変針を行います。実際の問題では以下のように指示されます。
第一変針点B | : | 宝島北灯台(Fl 7s31m12M)を左舷正横に見る地点で磁針路295゜に変針 |
変針の指示方法として、「○○灯台を左舷正横に見る地点で○○○度に変針」のように「左舷正横に見る地点」や「右舷正横に見る地点」という表現がよく用いられます。既定の針路で航行中、灯台や山頂などの「物標」を「左真横(ひだりまよこ)」(左舷正横)や「右真横(みぎまよこ)」(右舷正横)に見る地点になったら、指示された針路に変更するという意味です。変針点を海図にプロット(plot:描く、点を書く)する場合は次のようにします。
以上基礎的な事項の説明を終えたところで、次は具体的な海図問題のポイントを説明します。
海図を用いた問題には幾つかのパターンがあります。以下、順にそのポイントを説明します。
1. 航海計画
1.全航程の距離
指示された航海計画を海図上に記入し、その全航程の距離を求める問題です。航程は出航点、 2ヶ所の変針点、そして到着点の 4点が指定されます。そのうち出航点は a.「海域名と経度および緯度が指定される場合」と b.「灯台などの物標までの距離と方位が指定される場合」があります。
「海域名」と「経度および緯度」によって出航点が指定される場合、出航点は次のように指示されます。
出航点A | : | 宝島南東海域 33゜ −12.0’ N、134゜ −55.4’Eの地点から磁針路300゜で航行 |
「宝島南東海域」と指示されるのは、広い海図の「どの辺り」かを概略指定するもので、特別な意味はありません。経度と緯度で船位が指定された場合は、基礎知識で説明したように緯度目盛と経度目盛により船位を特定します。
「物標までの距離と方位」によって出航点が指定される場合、出航点は次のように指示されます。
出航点A | : | 宝島南東海域 宝島東灯台(Oc 6s 44m20M)を磁針方位330゜ 3海里に見る地点から ...」 |
この場合、磁針方位は物標(右の図では宝島東灯台(Oc 6s 44m20M))を見ている場所(現在の船位)からの物標への方位が指示されます。
全航程の距離を求める問題の変針点(第一変針点、第二変針点)は、どちらも物標を「右正横に見る地点」あるいは「左正横に見る地点」という表現で指示され、その特定の方法は 4. 変針点とは で説明したとおりです。また、到着点は「海域名」と「経度および緯度」で指示されます。(※ 1. 経度、緯度から船位を求める を参照)
以上の要領で「出航点A」−「第一変針点B」−「第二変針点C」−「到着点D」の航海計画を海図にプロットしたあと、各ポイント間の距離をディバイダーと緯度目盛を使って計測します。緯度目盛は測定しようとするポイントの正横付近を利用し、0.1海里程度の精度で読み取ります。0.1海里は最小目盛( 0.2’)の半分に当たります。
測定するポイント区間が 3つありますので、それぞれの測定値を合算して全航程を求めます。解答方法は四肢選択ですので、誤差おおむね 1海里( 1’)以内の選択肢があれば正解だと思います。誤差範囲に収まるような選択肢が見つからなければ、プロットや測距に問題がありそうです。
※計測区間が短い場合、ディバイダーで直接区間を捕らえて緯度目盛で読み取ります。区間距離が10海里を超えるような場合、あらかじめディバイダーの歩間距離(針先間の距離の意)を10海里に合わせ、測定する区間を「尺取り虫」流に10海里ごと何回か加算し、残り10海里以内の部分を直接計測して合算します。
2.所要時間
上記「全航程の距離」の応用問題です。全航程の距離は作図により求めます。
以下に例を示します。
[ 例 ]
全航程の距離 : 30海里、 全航程速力 : 9ノット の場合の所要時間を求める
所用時間 = 30 ÷ 9 ≒ 3.3 時間、 0.3時間 = 0.3 × 60 = 18分
∴ 所要時間は 3時間 18分 .
さて、所要時間を求める問題のところで「出航点」を指示するもう一つの方法を説明します。この指示方法は、図のように 2つの物標への磁方位が示されており、それぞれの方位線の交点を船位とするものです。後述する船位測定法の一つで、クロスベアリング(交叉方位法)と呼びます。船位の具体的な指示方法および解法は以下のようになります。
出航点A | : | 宝島南東海域 宝島東灯台(Oc 6s 44m20M)を磁針方位175゜、宝島北灯台(Fl 7s31m12M)を磁針方位265゜に見る地点から ...」 |
誤差を少なくするため、 二つの方位線間の角度はおおむね 90゜程度となるよう物標が選ばれています。(※ちなみに物標が 3つとなる場合もあり、方位線間の角度は約 60゜となるよう物標が選ばれます。)
2. 船位の測定
1.クロスベアリング(交叉方位法)
クロスベアリング(cross bearing : 交叉方位法)のベアリングは「方位」「方角」という意味があります。クロス(交叉)した方位線の交点を船位とする方法です。具体的な使用法は上で説明していますが、船位の測定問題では「自差」という要素が重要になります。
「自差」とは海図上の「磁方位」と自船の[コンパス方位」とのズレをいいます。船上のコンパスは付近の金属製品や電機設備の影響で正しい磁北を示さないことがあります。この磁北に対するズレが西(W)または東(E)に何度ずれているかを自差で示します。
船上ではコンパス方位を知ることが出来るのですが、自船の自差が分かれば、コンパス方位から正しい磁方位が得られます。船位の測定問題ではコンパス方位と自差が指示されますので、これらから正しい磁方位を計算して問題を解きます。具体的な問題の例を以下に示します。
宝島東方海域を一定針路で航行中のA船は、宝島の東灯台(Oc 6s 44m20M)をコンパス方位180゜、宝島の北灯台(Fl 7s31m12M)をコンパス方位270゜に測定した。A船の船位(緯度、経度)は、次のうちどれか。ただし、このときの船首方向に対する自差は 5゜Wであった。
問題の例のように自差は「 5゜W」や「 7゜E」のように表されます。「5゜W」は「コンパスの北が磁北より西へ 5゜ずれている」(左へ 5゜回っている)、すなわち「コンパスの指針から 5゜を引くと磁方位となる」という意味であり、正しい磁方位を求めるには、コンパス方位から 5゜をマイナスします。同様に「 7゜E」の場合は、指示されたコンパス方位に 7゜をプラスします。この部分は理屈を考えれば計算できますが、単純に以下のように覚えてもよいでしょう。
2.重視線(トランシット)の利用
「重視線」を船位の計測に用います。二つ以上の物標が一直線上に重なる線を重視線(transit:トランシット)といいます。自船はこの重視線上にあり、さらに別の物標への方位が示されている場合に船位が測定できます。具体的な問題は以下のようになります。
宝島西方海域を一定針路で航行中のA船は、宝島山頂と宝島南西灯台(FIWR10s41m17 15M)のトランシット(重視線)をコンパス方位 60゜、海埼灯台をコンパス方位 315゜に測定した。A船の船位(緯度、経度)は、次のうちどれか。
この問題は、自差が示されていないので 重視線の磁方位とコンパス方位から自差を計算 する必要があります。手順は以下のようになります。
3.レーダーによる測定
船位を測定する問題の最後が「レーダーによる測定」です。レーダーはレーダーアンテナから発射したレーダー波の反射を画面上にプロットする航海計器で、陸地や他の船舶からの反射波をスコープ(画面)上に表示して、その方向と距離を知ることが出来ます。表示方式はスコープの上方が北になる「真方位指示」と船首方向が上方になる「相対方位指示」がありますが、小型船舶用にはジャイロ・コンパスを搭載していない「相対方位指示」が主流となっています。「相対方位指示」では船首方向のレーダー方位を 0゜(スコープ上の真上)とします。
「レーダーによる測定」の問題は、以下のような問題形式になります。
A船は、宝島東方海域をコンパス針路 320゜(自差 4゜W)で航行中、レーダーにより宝島北端を方位240゜ 距離 3海里に測定した。A船の船位(緯度、経度)は、次のうちどれか。ただし、レーダーは相対方位指示とする。
以上のようにレーダー指示から船位を特定することが出来ます。この問題のポイントは、レーダー方位から自船に対する物標方位を正しく把握することにあります。
船舶は潮流や風の影響を受けて航行します。右の図は、順潮(fair tide)と逆潮(head tide)による実航針路(および実航速力)の違いを示したものです。図中の黒い矢印の「磁針路」は矢印の向きが船首の方向を、矢印の長さが出航時の速力を表しています。同様に青い矢印は潮流の流向と流速を、赤い矢印は潮流の影響を受けて実際に船が進んだ方向(実航針路)と実際の速力(実航速力)を表しています。順潮と逆潮では実航針路や実航速力に大きな違いが出ることが分かります。潮流問題は、1.出航時の針路と速力、2.潮流の流向と流速、3.実航針路と実航速力 の 3要素のうち、いずれか 2要素が指定され、残りの不明な 1要素を作図から求める問題となります。
潮流の問題、高校時代に力学の科目を修めた方はピンと来るかもしれませんが、実はベクトルの和を扱う問題です。ベクトルの和というと難しそうですが、単に平行四辺形の対角線を求めると考えれば、そう難しくはありません。
図を例に考えると、「A」と「B」(共に方向と大きさを持つ量なのでベクトルといいます)の合計は「A+B」と表し、その方向と大きさは、辺Aと辺Bを持つ平行四辺形の対角線A+Bと同じになります。
また、ベクトルは平行移動しても実体は変わらず、図の「A」と「A'」は同じ大きさと方向を持つ同一のベクトルと考えて差し支えありません。(A = A'、同様にB = B')
さて、ベクトルの話はこれくらいにして、実際の問題を見てみましょう。計 3パターンの問題があります。
1.海流の流向、流速を求める
「出港時の針路と速力」および「一定時間航行後の船位」が指定され、その時の海流の流向と流速を求める問題です。具体的には以下のような形式で出題されます。
A船は、10時00分、宝島南西灯台を磁針方位 8゜、距離 2海里に見る地点から、磁針路292°、速力 6ノットで航行を開始した。A船はその後も同一の針路、速力で航行し、11時30分に船位を測定したところ、海埼灯台から磁針方位 10°距離 3海里の地点であった。この海域における海流の流向(真方位)、流速はつぎのうちどれか。
前述したように、最初の針路と速力を維持して航行しても潮流の影響で実際のコースラインは異なってきます。この問題は潮流の影響がないものと仮定した一定時間後(大抵は 1時間30分)の船位と潮流の影響を受けた場合の船位から潮流の方向と大きさを求めるものです。以下のように解きます。
海流を扱うときは、「真方位」を使うので、「磁方位」と取り違えないよう十分注意しましょう。
2.実航磁針路、実航速力を求める
「出港時の針路と速力」および「潮流の流向、流速」が指定されていて、これらから実航針路と実航速力を求める問題です。以下のように出題されます。
A船は、宝島南西灯台を磁針方位 8゜、距離 2海里に見る地点から、磁針路292°、速力 6ノットで航行を開始した。この海域には、流向240゜(真方位)、流速 3ノットの海流があるもとのして、A船の実航磁針路及び実航速力を求め、次のうちから選べ。
3. 海流を加味した針路を求める
潮流航法の最後は、海流を加味した針路の求め方です。航海前に決めた地図上の進路は海流により偏向してしまうので、最初から海流を考慮して針路を決定する方法があります。具体的な問題は以下のように出題されます。
A船は、海埼南方海域を速力 6ノットで航行中、海崎灯台を磁針方位30゜、距離 3海里に見る地点に達した。この地点より、宝島南西灯台を左舷正横2.5海里となるように航行するには、磁針路を何度にとればよいか。次のうちから選べ。ただし、この海域には流向250゜(真方位)、流速 2ノットの海流があるものとする。
理屈は分かりますか。作図で求めたB-C(出航時の針路)は出航点が潮流の先端なのでピンと来ない方もあるかもしれません。B-Cをそのまま平行移動して出航点Aに合わせると、出航時に取るべき針路が分かります。この問題も基本的には今までの平行四辺形問題と大差ないことがお分かりいただけると思います。
以上、海図の問題に関して要点をまとめてみました。かなりのボリュームになりましたが、これらのポイントを押さえて練習問題に取り組めば、試験当日も失敗は無いと思います。受験対策にご利用ください。
いよいよ試験当日、集合時間が 9時15分とあったので 9時前には会場へ到着しました。参考書や問題集を持参しなかったので、他の受験生と雑談などをして待っていると、9時半過ぎ、試験担当者からスケジュールと注意事項の説明がありました。説明によると、最初に身体検査を実施し、筆記試験は 10時30分から全国一斉に開始するということでした。身体検査は「視力検査機」による視力の検査、「色盲検査表」による弁色力の検査、「試験担当者との会話」による聴力検査、「歩行や動作の観察」による運動検査が実施されますが、一人当たり 1〜2分で終了します。受験票の「身体」欄に「合格」印を押してもらい、筆記試験開始時間まで待機することになりました。前回四級を受験したとき、眼鏡を使用していると「身体検査 乙種 合格」(裸眼なら甲種合格!)となりましたが、今回はそのような区別は無くなったようです。
少々長目の休憩時間ののち、筆記試験が始まりました。10時15分頃から説明が始まり、OCRの答案用紙に受験番号や試験番号を記入します。合格発表は受験番号のみで行われますので、受験番号は間違いのないよう慎重・正確に記入します。
定刻通り 10時30分から試験が開始されました。最初の 3問が難関の海図問題です。丁寧に作図をしていると結構時間が掛かります。答案は答案用紙へ直ぐに記入せず、問題用紙にチェックをしておきました。解答に使用した計算式なども確認のために残しておいたほうが良いでしょう。
4問目からは四肢拓一問題になり、ほっと一息つきます。問題集を一通りやっていれば難しい問題はありませんが、早合点をしないよう慎重に最後まで読んでから解答します。私の経験から、一度思いこむとなかなか間違いに気が付かないもので、最初の取り組みが肝心なようです。
30分ほどで一通りの解答を終え、確認のための 2回目のチャレンジで答案用紙に記入していきました。海図問題の 3問目に不注意(1時間半の航行時間を 1時間として解答していた)があることに気付き、あわてて修正しました。ケアレスミスには十分注意しましょう。
問題の再確認を一通り終え、答案用紙の転記ミスもチェックし終えたので、試験時間の70分を12〜13分ほど残し、退室することにしました。退出時には「答案用紙」と「受験票」を残し、「問題用紙」や「筆記用具」は持ち帰ります。
会場では「二級小型船舶操縦士」の試験も行われており、全ての試験が終わるのが 11時40分となります。全試験終了後に「正解」が公開されるので、ドキドキしながら自己採点を行ってみました。幸い全問正解で、安心して帰宅することが出来ました。今回の学科試験の合否結果は、翌日の 13時から JMRAのホームページ で確認することができました。発表は受験会場と受験番号のみが掲示されますので、自分の受験番号を忘れないよう注意する必要があります。(※受験票は回収されますので ...)
私の受験した「二級 → 一級」は実技試験が免除されますが、実技試験が課せられる他の試験種目に合わせて、最終的な「総合発表」は 1週間後に行われるようです。この総合発表以降、「合格証明書」が交付されることになります。
さて、どのような問題が出されるか気になる方もいらっしゃると思うので、試験後に持ち帰りが許される「学科試験問題」を以下に掲載しておきます。試験問題は実施日付が印刷されており、毎回異なった内容です。参考のため、正解番号を「赤字」で示しておきました。
問51 次の航海計画を海図上に記入し、全航程を求め、下のうちから選べ。ただし、風や海潮流の影響はないものとする。(試験用海図第150号使用)
「出航点A | : | 牛島北方海域 緑埼灯台を磁針方位190゜、3海里に見る地点から磁針路330゜で航行 |
第一変針点B | : | 大島の黄岬灯台を左舷正横に見る地点で磁針路280゜に変針 |
第二変針点C | : | 白埼灯台を左舷正横に見る地点で変針 |
到着点D | : | 大浜港西方海域 30゜-04.4’N、135゜-00.6’E」 |
問52 A船は、大島の東方海域をコンパス針路281゜(自差4゜E)で航行中、レーダーにより緑埼灯台を方位285゜、距離6海里に測定した。A船の船位(緯度、経度)は次のうちどれか。ただし、レーダーは相対方位指示とする。(試験用海図第150号使用)
(1)30゜−04.7’N、135゜−28.5’E | (2)30゜−04.5’N、135゜−29.0’E |
(3)30゜−04.3,N、135゜−29.4,E | (4)29゜−58.1’N、135゜−32.8’E |
問53 A船は、10時00分鹿島南端の鹿島灯台(Fl(3)18s)を磁針方位330゜、距離3海里に見る地点から、磁針路055゜速力8ノットで航行を開始した。A船はその後も同一の針路、速力で航行し、11時30分に船位を測定したところ、西川港の赤岬灯台から磁針方位203゜、距離3海里の地点であった。この海域における海流の流向(真方位)、流速は次のうちどれか。(試験用海図第150号使用)
(1)255゜ ……… 2.9ノット | (2)260゜ ……… 2.9ノット |
(3)255゜ ……… 4.4ノット | (4)260゜ ……… 4.4ノット |
問54 膨脹式救命いかだの取扱い上の注意事項として適当なものは、次のうちどれか。
(1)救命いかだは、風雨による劣化や船体の動揺による損傷を防ぐため、船倉に固縛しておく。
(2)FRPコンテナに収納されているものは、内部のいかだが蒸れないように、ときどき通風換気をする。
(3)自動離脱器がついているものは、錆びつかないように、自動離脱器にペイントを塗っておく。
(4)自動離脱器がついているものは、いかだが自動的に膨張するように、作動索等(取扱説明書に記載されたもの)を船体に接続しておく。
問55 右図は、日本近海の海流の状況を示したものである。図中(ア)の海流の名称は、次のうちどれか。
(1)リマン海流
(2)親潮
(3)対馬海流
(4)黒潮
問56 館山における6月1日午後の高潮時の潮時潮高を求め、正しいものを次のうちから選べ。ただし、潮汐表によると館山の標準港は横浜で、潮時差は−0h 15m、潮高比は0.78、横浜港の当日の潮汐は右表のとおりである。
(1)18時17分、約101cm
(2)18時17分、約140cm
(3)18時32分、約179cm
(4)18時47分、約257cm
問57 自船が台風の進行方向の左半円にいるときは、一般に風波をどの方向から受けて避航するのがよいか。次のうちから選べ。
(1)右舷船首 (2)右舷船尾 (3)左舷船首 (4)左舷船尾
問58 T丸は、FRP製プレジャーボートで、A船長1人が乗り組み、同乗者3人を乗せ周遊の目的で出港した。
出港後、A船長は、船首甲板上に座っている同乗者に対して、海上は平穏であるが念のため手すりにしっかりつかまっておくように注意し、同乗者が手すりにつかまったことを確認した後、エンジンを中速力に増速し、手動操舵で航行を続けた。
しばらくして、A船長は、前方を航行中の大型船から発生した航走波が接近していることに気付いたが、全速力で航行していないので大丈夫だと思い、そのまま航走波を乗り切ろうとした。
この際、船首部が航走波を受けて大きく持ち上げられ、同乗者が跳ね上げられたため、A船長は、急いでクラッチを中立にしたが、同乗者が甲板上に打ち付けられて、腰椎圧迫骨折を負った。
上記の海難事故について、その直接の原因と考えられないものは、次のうちどれか。
(1)速力を大幅に減じなかった。
(2)手動操舵で航行した。
(3)同乗者に、操舵室や後部甲板に移動するよう指示しなかった。
(4)航走波を乗り切る角度が適切でなかった。
問59 ガソリンエンジンと比べたディーゼルエンジンの特徴として、誤っているものはどれか。
(1)振動が少ない。 | (2)燃料費が安い。 |
(3)電気的な部品が少ない。 | (4)堅牢な構造で重量がある。 |
問60 エンジンオイルの劣化を防止するための方法として誤っているものは、次のうちどれか。
(1)エンジンオイルの温度を高く保つ。 | (2)エンジンオイルの交換周期を短くする。 |
(3)オイルフィルターの掃除を怠らない。 | (4)燃料油、水分、ゴミの混入を避ける。 |
問61 直接冷却式エンジンの冷却水系統のサーモスタットについて述べた次の(A)と(B)について、それぞれの正誤を判断し、下のうちからあてはまるものを選べ。
(A)冷却海水の流れを制御し、エンジンが冷えているときは、エンジン内部の冷却海水を船外に排出せずエンジン内で循環させ、エンジンが温まってきたら排出する。
(B)冷却水温度計が異常を示した場合、海水取り入れ口、海水フィルターの詰まり、ポンプの故障等の他、サーモスタットの破損が考えられる。
(1)(A)は正しく、(B)は誤っている。 | (2)(A)は誤っていて、(B)は正しい。 |
(3)(A)も(B)も正しい。 | (4)(A)も(B)も誤っている。 |
問62 船内機船のプロペラとプロペラシャフト系統について述べた次の文のうち、正しいものはどれか。
(1)スターンチュ一ブは、プロペラナットで船体に取り付けられている。
(2)プロペラシャフトには防食亜鉛が取り付けられている。
(3)スターンチューブのカットレスベアリングには、FRPが使われている。
(4)前進が右回りのプロペラの締付けナットは、右ねじである。
問63 ディーゼルエンジンが始動してもすぐ止まる場合の原因として適当でないものは、次のうちどれか。
(1)燃料フィルターが詰まっている。
(2)燃料噴射ポンプ、燃料ポンプ、ガバナー等が故障している。
(3)チョークバルブが開いている、またはキャブレターが故障している。
(4)燃料系統に水や空気が混入している。
問64 ディーゼルエンジンの排気色について述べた次の(A)と(B)について、それぞれの正誤を判断し、下のうちからあてはまるものを選べ。
(A)エンジンに負荷がかかり過ぎると、黒煙を排出する。
(B)エンジンオイルがシリンダーに入り過ぎると、排気が黒煙になる。
(1)(A)は正しく、(B)は誤っている。 | (2)(A)は誤っていて、(B)は正しい。 |
(3)(A)も(B)も正しい。 | (4)(A)も(B)も誤っている。 |
試験から 1週間後に総合発表が行われました。今回、試験の翌日に学科試験の合否が分かっていたので、総合発表の合否を確認することなく直接 JMRAで「操縦試験合格証明書」の交付を受けました。午前10時から交付が行われるので、合格証明書の交付を受けたその足で運輸局へ出向き、免許交付の手続きも合わせて済ませることにしました。なお、JMRAへ直接行けない場合、料金を負担すれば郵送も可能なようです。
合格証明書は単に交付を受けるだけなので、印鑑を忘れずに持参すれば問題ありません。JMRAの窓口で試験日、試験会場、受験番号、名前を告げれば直ぐに受け取ることが出来ます。(本人確認は合格証明書の写真で行われます。)
続いて運輸局で免許の申請を行います。即日交付なので、書類に不備がなければ直ぐに免許が手に入ります。ここで気を付けたいのは、免許申請は本人または海事代理士以外は出来ない ということです。申請自体は優しいので誰にでも出来ますが、時間の都合が付かない場合は海事代理士に依頼することになります。ボートスクールなどで受験をする場合、海事代理士の代行申請料が授業料に含まれているのが普通のようです。
免許申請には以下の書類を準備します。
書類 | 数 | 備考 |
---|---|---|
操縦免許申請書 | 1 | A4サイズのOCR用紙です。用紙は地方運輸局の窓口で入手します。JMRAの地方事務所でも入手でき、送料を負担すれば郵送もしてくれるようです。 |
写真(縦45mm、横35mm) | 1 | パスポート用写真の規格と同じです。操縦免許申請書に貼付します。 |
操縦試験合格証明書 | 1 | JMRAで交付を受けたものをそのまま提出します。 |
「本籍記載の住民票の写し」 | 1 | 受験申請時にコピーを添付しましたが、その元となった「本籍記載の住民票の写し」です。 |
納付書 | 1 | 納付書(地方運輸局の窓口で入手)に免許申請手数料として 1,500円の「収入印紙」(郵便局などで入手)を貼付します。 |
操縦免許証・海技免状 | 1 | 現有あるいは失効している免許証・海技免状を返納します。 |
JMRAで「操縦試験合格証明書」の交付を受けたその足で、地方運輸局に出向きました。小型船舶操縦士の免許交付は「海技資格課」という部署で行われます。案内に従い受付に「免許申請書類一式」を提出すると、窓口が空いていたこともあり 5〜6分で新しい免許証が交付されました。なお、旧の海技免状にパンチ穴を空けたものを希望で渡せるという説明があり、記念に貰うことにしました。
交付された「小型船舶操縦免許証」は自動車の「運転免許証」と同じ大きさのカードで、裏当て(違反記録を書いたりする紙)のない分、少し薄手になっています。顔写真や文字は全て写し込まれています。
免許証名、氏名、生年月日は英文字が併記されており、以前より少し格好良くなりました。免許の有効期限は旧免許に関わらず新たに 5年が付加されています。
交付者は自動車免許の「公安委員会」とは違い「国土交通大臣」なので、少し格がありそうです。
利用したプロモーションシステムは「二級 → 一級」でしたが、厳密には「四級小型船舶 → 一級」です。そのため、資格欄には「一級」以外に「特殊」と「特定」が付記されています。「特殊」は「水上オートバイ」の資格で、旧制度では「四級」に含まれていましたが、新制度では別資格となったものです。「特定」は旅客船や遊漁船など人の運送をする小型船舶の船長になろうとする者に必要な資格で、新免許制度で新たに免許を取得する者で、これら特定の業務を行う場合は、通常の試験(小型船舶操縦試験)の合格に加えて、小型船舶操縦者としての業務を行うに当たり必要となる海難発生時における措置、救命設備等に関する「小型旅客安全講習」の受講が必要となります。平成15年 6月 1日より前の免許取得者は、この講習を受講する必要がありませんので、自動的に「特定」が付加されることになります。
以上、新しい免許制度で拡充された「プロモーションシステム」を利用した「一級小型船舶操縦士免許」への挑戦記録でした。人によって無関係な方もあると思いますが、最小の負担で上級免許を取得できることをメリットと感じる方も多いと思います。本レポートを読んで、「プロモーションシステム」を利用される方の参考になれば幸いです。
2003年12月17日 初版 |
2004年12月13日 改訂6 |
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