ホームページを開設してから一月と少し、ボートについていろいろ記述する中で、ボート各部の名称を結構いい加減に使っていることに気づきました。小型船舶免許を取得するときには大まかな名称を学んだのですが、細部になると曖昧になります。この機会にもう少し詳しく整理して、今後の執筆に生かしたいと思います。
以下は、私なりに文献やインターネットで調べたボート各部の一般的な名称です。語源、和訳、意味などに間違いがあったり、抜けているところがあるかもしれません。お気づきの点があれば、ご連絡ください。
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ボートの船体そのものを「ハル」と呼びます。エンジンや上部構造物(キャビンなど)を除いた純粋に「船体」だけを指します。ミニ・ボートなどは代表的な「ハルだけ」の構造と言えるでしょう。
アフトは本来「船尾に」「船尾の方へ」という副詞ですので、ボート中央から見て「後ろ側」くらいのニュアンスです。厳密にここからが「アフト」という決まりはありません。自動車では「リヤ」という言葉を多用しますが、ボートでは使われません。
アフトに対してフォアです。フォアも副詞的に「船首に」「船首の方へ」という使い方と航海用語で「船首部」という名詞的な使い方があります。フォアも厳密に定義されているのではなく、ボート中央から見て「前側」くらいのニュアンスです。自動車で言う「フロント」も、ボートでは使われません。
スターンは船尾そのものを指します。ボートを前後方向でおおまかに3分割した場合、一番後部がスターンと呼ばれる部分です。
ボートの中央部分を指します。ボートを前後方向でおおまかに3分割した場合、真ん中がミッドシップ呼ばれる部分です。
スターンに対する用語です。ボートを前後方向でおおまかに3分割した場合、一番前がバウにあたります。
船尾を断ち切った形状で、ハルの船尾部を構成する立て板のこと。和船の「戸立」は船尾を仕切る板のことを指しますが、トランサムとほぼ同じものと考えられます。
辞書によると「chine」は動物の背骨を意味する名詞とありますが、ここでは当たりません。V型や平底ボートのようにボトム(船底)とトップ・サイド(舷側)が一線で区別されている船体の境目に当たります。日本語の適訳はないようです。
揚力を発生するために船底に設けた何本かのすじ状水平面のことを言います。strakeは外板に付けられた条列(何本かのすじ)のことですが、ディープV型艇のデッド・ライズ(底勾配)によって生じる揚力不足分を補ったり、スプレー・カット、直進性向上などの目的で付けられています。日本では同様の造作を「ストライプ」と呼んでいるようですが、これはヤマハがディープV型艇を開発したときに命名した独自名が始まりのようです。
ボトムの中央を縦に走る骨材をキール(竜骨)と言いますが、キールから飛び出した「ヒレ状」の構造物をスケグと呼び直進性の向上などを目的に付けられています。現代のボートでは明確な骨材としてのキールがないので、スケグとの区別が曖昧ですが、キールはボート本体の強度部分を、スケグは航行性能向上のための造作部分を指します。
ボートの背骨に当たる主要な構造体で、ボトム(船底)中央を船首から船尾まで一貫して通る貫通材をキール(竜骨)と呼びます。ただ現在のボートは、強度部位としてその働きを担ってはいますが、骨材が入っているということはなく、ボトム中央の稜線部がキールに相当すると思われます。また、前述したスケグと一体に成形される場合も多いようです。
船首のステム下部からボトムのミッドシップあたりまで、水中で水を切って進む部分を指します。「水を切る」のは主にステムのように思われますが、「entry」の意味を考えると、水中部分を指すようです。
キールから立ち上がる船首部材のこと。現代のボートには部材としてのキールはないので、船首の稜線部分をステムと呼びます。和船の水押(みおし→みよし)とほぼ同じ部位のこと。
直訳すると「クチバシの頭」となりますが、船首先端部のとがった部分を指します。
大まかにはボートの側面、喫水線より上側をいいます。
ボートの底にあたりますが、チャインが明確ならチャインより下の部分になります。
トップ・サイド上部の船縁(ふなべり)を指します。現在のボートでは明確な部位は特定できない場合が多いようです。
ボート上の開口部(コクピット、ハッチなど)に周囲から水が入らないように少し高く作った縁(ふち)。
ボートではハル上縁に位置する床面のことを指します。古くは木造船においてハル上部に渡された「ビーム」に張られた床面をデッキと呼びました。ミニ・ボートのようにハル上面より低い位置に人が乗る場合、そこに張られた床は「デッキ」とは呼ばず「ソール」といいます。
ガンネル付近にレール状に取り付けられる擦れ止め緩衝材のこと。ゴム、合成樹脂、アルミ、木材などで作られ、ボート全周にわたって取り付けられる場合もあります。
ボートの場合、デッキより低く周りを囲まれた部分をコックピットと呼びます。「cockpit」の和訳を「操舵席」としましたが、これはミニ・ボートの場合に限られ、原則としてデッキより低い部分を指す用語です。ミニ・ボートで人が座る場所は[コックピット」です。
日本ではデッキと混同されているようですが、コックピットやキャビンの「床」を指します。ミニ・ボートで人が座る部分をコックピットと言いますから、そこに張った床は「デッキ」ではなく「ソール」になります。
デッキの「牆」(かこい)のことで、波浪がデッキに上がらないようにするとともに、人が落ちないような役目もあります。
以上、細かい部分を除いて大体の名称は出揃ったと思います。今までいい加減に理解していたところが結構ありました。普段の釣行ではそれほど必要ないのですが、いざ物を書くとなると「曖昧さ」に立ち止まることが結構あります。皆様にもお役に立てば幸いです。
2002年 2月26日 初版 |
2002年 2月27日 改訂1 |
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